1770年、イギリスのランカシャー州ブラックバーンで、James Hargreaves氏が紡績機械の特許を取得し、一人の紡績工が8台の紡錘を動かし、以前の8倍の"糸や毛糸"を生産することを可能にしました。その時から、織物を生産する際の市場までの時間や人件費を削減し、より少ない労力でより多くを生産することが、ビジネス成長の原動力になってきました。
この生産性の高さが、利益を左右する重要な経済的要素であることに、今も変わりはありません。
現代の経済では、ソフトウェアやアプリケーションの"糸と毛糸"と言えるものの測定が必要です。綿やウールなどの繊維成分とは異なり、ソフトやアプリから提供される生データを測定するには、翻訳し比較し分析することが必要です。会社のチームリーダーは、そのデータを見て解釈し行動するため、いわば代理でデータを整理し表示してくれるツールを必要としています。
ビジネス・インテリジェンス・ソフトウェアに不可欠なダッシュボードは、上記のような代理でデータを整理し表示してくれるツールの役割を担っています。
そして、表示するデータを細分化したり繋ぎ合わせたりすることで、次の3種類のダッシュボードに分けられます。
これらの種類にかかわらず、ダッシュボードは企業特有のニーズと文化を反映し、企業のハイレベルな(またはローレベルの)目標に基づいた主要業績評価指標(以下KPI)を表示する必要があります。KPIは各目標の定量的な測定値であり、他の定義のための指標になります。
ReportGarden社のSruthi Varanasi氏が「指標とは特定のビジネスプロセスの状況を追跡し評価するために使用される定量的な尺度である」と定義している通り、各企業が設定するKPIは、重要な尺度となります。
メトリクスつまり指標は、会社のオンライン・ビジネスがどのような状態にあるかを示す最も重要なバロメーターです。
例えば、コンバージョンが15%増加した場合、会社の業績は上昇傾向と言えます。加えて、これらの指標は、ビジネスが深い海を航行し続けているか、浅瀬が近くないか、などを警告するブイのような役割を果たします。1ヶ月でコンバージョンが21%低下した場合、会社の業績が低下傾向であり、戦略を再検討し直ちに調整する必要があることを示すことになります。
主要なビジネス・インテリジェンス指標を示し、不必要なデータを除き、よく整備されたダッシュボードを構築することは、科学と芸術の両方のスキルが必要となります。
ダッシュボードは、ウェブページのコンテンツや実際の製品の機能など、ビジネス上の適切な意思決定を行うために、必要なデータを一目で示すものであることが必要です。
メトリクスつまり指標は、会社のオンライン・ビジネスがどのような状態にあるかを示す最も重要なバロメーターです。
では、ダッシュボードに表示する指標をどのように決定し、実用的なデータを抽出できるでしょうか?ビジネス目標に対するKPIをどのように設定できるでしょうか?次のABLEのステップ(ABLE = Apply, Bring, Limit, and Eliminate)を踏むことで、ダッシュボード上に意味のあるデータを出力できるようになります。
一例として、最優先目標が月間定期収入(MRR)の増加である場合、KPIの有効性を評価するための質問と回答を見ていきましょう。
これらを考慮した後チームは次のKPIと指標を設定します。
KPI:第2四半期中にMRRを3%増加させる
ダッシュボードに表示する指標:毎月の売上高
会社のビジネス目標達成のため最も重要なこのKPIについて、チームメンバーとの合意形成を図ります。全体の意見を聞くことは、最も重要なKPIの本質を際立させるのに役立つだけでなく、チームの士気を高めることにもなります。チームメンバー全員が、このゲームに参加することになります。
アナリティクスアカデミーでは、ダッシュボードに表示させる指標は、最適化する必要のある特定のビジネスプロセスに注力することが目的である、と明言しています。上記のKPIの例では包括的な目標の下、MRRを増加させるという指標が3つのうちの1つになります。
ダッシュボードは、目標のステータスを一目で把握することが目的のため、1つのダッシュボードに表示される指標は7つまでとするのが原則です。そのため、ダッシュボードのデザインは、理解しやすく、更新が簡単で、二次的なデータに邪魔されないきれいなデザインであるべきです。
どの指標を含めるか、チームは難しい決断をしなければなりません。指標として選んだ二次データが邪魔になって、解釈が混乱しレビュアーが圧倒されないか、など考慮します。指標を少なくすれば、より良い測定基準を設定できます。
KPIをダッシュボードの軸として、ビジネス戦略を、機敏に、迅速に、対応させていきます。指標を上回るデータは、計画の安定性と着実性を意味します。一方、指標を下回るデータは、調整や代替案など、計画の変更を促すことになるでしょう。
効果的なダッシュボードは、この重要なデータを示し、取るべき行動の方針を明らかにします。
ABLEのステップに従ってKPIを決定し、ダッシュボードに出力する準備が整った時点で、「通常、企業で採用されている指標は何だろうか」と考えるかもしれません。
設定すべき指標は、ダッシュボードを毎日確認するチーム(ビジネスチーム?経営者層?)が持つ目的、 KPI の実行可能性、および希望するグラフなどのビジュアル要素に依存します。
例えば、マーケティングチームの指標には、Webトラフィック、売上増加、センチメント分析、コンバージョン率、SEOキーワードランキングの追跡が含まれるかもしれません。販売チームは、売上成長率、製品性能、平均購買額、平均利益率などを監視することができます。
財務チームは、運転資金、負債資本比率、流動比率をモニタリングすることができます。Eコマースチームは、顧客生涯価値(CLV)、顧客維持率、顧客解約分析、月次経常収益などをダッシュボードに表示することができます。
その他の重要なKPIとしては、純利益、収益成長率、プロジェクトスケジュール差異分析(PSV)、顧客一人当たりの平均収益などが挙げられます。KPI の選択は最終的には主観的なものですが、このABLE手法を用いることによって、どのデータを追跡して表示するのが最も意味がありビジネスにとってプラスになるかを、チームは判断することができます。
ダッシュボードに表示されるKPIは、会社のビジネス目標に基づき具体的であり、その目標の達成に関連があり、達成可能かつ測定可能、時間的な要件も満たすべきです。それらの要件を満たしているなら、ダッシュボード自体が、ビジネス目標達成のため必要かつ迅速に行動を起こすためのデータを示し、尚且つ、会社の大惨事を回避する警告ダッシュボードの役割も果たすでしょう。
ダッシュボードの構築にあたって、S.M.A.R.T.手法でKPIを選定し、KPIをチームに展開し、主要な目標やKPIの数を制限し、そして不必要なデータを配置しないことを心がけましょう。そうすることで、ダッシュボード上で、会社のビジネスにとって最も意味のある指標を表示させることができます。
次のステップを実行しましょう!
指標を選ぶ。ダッシュボードを構築する。データを収集する。ビジネスを成長させる。
※本記事は、「How BI’s User Experience Problem Just Got Solved」を翻訳・加筆修正したものです。