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東京五輪2020を成功させたデータと未来のデータ分析

作成者: マーケティングチーム|Sep 1, 2022 8:58:47 AM

オリンピックの開催は、世界で最も複雑かつ大規模なプロジェクトの一つです。16日間の日程で開催される大会競技のため、少なくとも7年間の事前準備と、その後の約1年間の計画が必要になります。

 

この間、各都市のオリンピック組織委員会(OCOG)は、大会の企画・運営に関する膨大なデータを収集します。この時期に蓄積されるデータや知識情報は、オリンピックの開催国にとっても、将来の大会開催国にとっても、非常に大きな価値を生み出します。これらデータから得られる知見は、各大会の計画と実施を成功に導くだけでなく、将来のオリンピック組織委員会が独自のビジョンを策定する助けにもなります。また、開催都市とその市民が、オリンピックがもたらす長期的な影響からどのように利益を得られるか、生まれるチャンスとリスクをどのように管理するかなどを理解する上で役に立っています。

2000年以降、国際オリンピック委員会(以下IOC)はデータの収集と分析に対して、ますます構造化されたアプローチを実践してきました。IOCの情報・知識・競技学習チーム(Information, Knowledge, and Games Learning、以下IKL)のアソシエイト・ディレクターであるChris Payne氏は次のように説明しています。

「私たちが扱っているデータですが、ビッグデータと呼ぶより、スモールデータと呼ぶほうがしっくりきます。なぜなら、扱うデータのほとんどが、オリンピックに関係する人とスポーツ競技環境に関する限定されたデータだからです。IKLチームでは、主なデータソースから約1TBのデータを収集します。また、オリンピック組織委員会から収集した400を超えるデータセットもあります。加えて、50以上の他機関に追加データセットを依頼し、通常、数百のデータセットを扱っています。」

これらのデータはすべて、学習と知識管理に不可欠です。「データと分析はオリンピックにとって新しいものではありません。何年にも渡って何らかの形で使われてきました。発展し変化し続けるオリンピックの大会競技、その大会を管理し実施するためにデータを使うことの重要性、これが、私たちが取り組んでいる新しいことです。」とPayne氏は説明します。

 

 

より近代的なオリンピックを実現するためのデータ活用

2012年のロンドンオリンピック以来、大会主催者はデータの収集・管理方法の改善に取り組んできました。

「今後、より効果的な大会運営を行うためには、より正確に測定し評価する必要があるという認識が広まりました。」とPayne氏は言います。「オリンピック事務局長のChristophe Dubi氏は、オリンピックを正しく測定し評価できなければ適切な運営はできない、という考え方に強い信念を持っています。」

このため、IOCは技術・情報部門に、IKLチームを設置しました。IKLチームのミッションは、「オリンピックの実施に関連する革新的かつ総合的な学習を積極的に利用促進し活気づけること」です。そのため、IKLの主要な原則の中には、知識情報はIOCの最も重要なビジネス資産であり、本委員会で働くすべての人は、複数の情報源から質の高い知識情報にアクセスする権利を持つナレッジワーカーである、という大原則が含まれています。

「最高情報責任者であるIlario Corna氏の強力なサポートにより、IKLは組織委員会から多くのデータセットを収集するだけでなく、構造化されたデータの取得をより多く行っています。」とPayne氏は言います。「大会をサポートするために、さまざまなシステムが使用されています。私たちは、主要な運営データを生成するコアゲームマネジメントシステムに重点を置いているため、当然ながら、これらのデータセットをより深く研究し、関心を持つようになりました。オリンピックの大会運営をさらに最適化する方法を学ぶため、それらのデータセットを紐解き、分析することに専念しています。」

導き出された分析結果は、非常に価値のあるものになっています。「大会の参加選手とスポーツ競技がオリンピックの中心であり、競技スケジュールは大会のすべてを左右します。そのため、私たちが知見を深めようとしているのは会場の運営です。たとえば、さまざまな関係者がいつ移動するのか、会場スペースがどのように使われているのか、などです」。


つまり、Payne氏とチームは、会場スペースの許容人数や人の行き交う量、会場の特定のテクノロジーの使用状況などを追跡しています。「私たちはテクノロジー・オペレーション・センターで、大会の主要なシステムを常時監視しています。」とPayne氏は続けます。「会場での競技終了後、チケット管理データにアクセスし、インシデントやその対応のパターンを分析することができます。」

これは、将来のオリンピック組織委員会が、会場レベルでどのようにサービスを計画すればよいかを理解する上で、重要な知見を提供します。また、記述的な分析は、特定のスポーツのアスリート数や、競技をサポートするために必要な作業員数を理解するのにも役に立ちます。

「オリンピック会場計画の観点からは、会場運営のピークがいつなのか、会場の裏側のスペースがどのように使われているのかをよく理解することで、適切なサイズの会場を選択し、規模を設定し、そして提供することができます。」とPayne氏は付け加えます。「また、データを理解する際、そしてより重要なのは、それを伝える際に、COVID-19の影響を考慮して取り組んでいます」。

Payne氏とチームは、取得するデータの量を増やし、データ戦略を補強するために自動化を使用しています。「これは、私たちにとって本当に大きな進歩です。私たちは、主要なパートナー会社と協力して、さまざまなデータセットを取得するために、要の場所にセンサーを設置しています。また、これまでよりもはるかに高度な分析ができるように、分析エンジンも構築中です。」

この分析エンジンは、構造化されたデータと非構造化データの両方を処理することができます。「私たちは常に、文書ライブラリ、分析レポート、写真、ビデオなど、あらゆる種類のソースからデータを収集しています。」と、Payne氏は言います。「構造化および非構造化データソースの統合は、主要な関係者に対して、過去に何がうまくいったか、あるいはうまくいかなかったかを報告する際、将来的にどのような方法で実施するかについて、じっくりと考えて議論することができるため、非常に意味があります。」

 

データによる閃きの瞬間をとらえる「分析モーメント」

IOCは主要な大会運営者のために「分析モーメント」を準備することを計画しています。分析エンジンを構築することで、データをワークフローに統合し、技術者ではないチームメンバーが、データに基づいたより賢明な意思決定を行えるようにしたい(技術者のサポートなしに)と考えています。

「このデータの民主化は、私たちにとって本当の意味でゲームチェンジャーになるでしょう。」とPayne氏は言います。「データリテラシーを向上させたいのであれば、良いものを見せなければなりません。そのようなデータによる閃きの瞬間を経験するとき、人は非常に満足を感じます。」


そのため、IOCは提供されるデータが有用であるだけでなく、十分に理解されるデータを提供するため、様々な組織委員会の関係者をデータ取得プロセスに関与させています。

「主要な関係者を招待し、どのような種類のデータが特に重要なのか、それぞれの状況に合わせて教えてもらいました。」とPayne氏は言います。「オリンピックは非常に多文化的であり、地域ごとに異なるニーズがあることを理解することが重要です。私たちは、これらの異なるニーズに可能な限り応えたいと考えています。」

Payne氏の情熱が見て取れます。「大会の運用データ解析の観点からすると、東京オリンピック2020大会は、まさに新たな時代の到来と言えるでしょう。何が実現できるのか、とても楽しみです。」とPayne氏は言います。

 

 

会場からの最先端データが創り出すより良い将来への繋がり

将来のオリンピック競技は、さらにエキサイティングだとPayne氏は言います。「例えば、ロサンゼルスには、最先端の技術でデータ接続された会場がいくつかあります。そこには、会場から信じられないほど詳細なデータと分析結果を得ることができます。」

最先端のWi-Fiシステム、IoTセンサーなど、技術的に高度に接続された会場からのデータは、大会の運用方法に大きな変化をもたらし、今後さらにデータからの学習の機会を与えてくれるとPayne氏は信じています。

「ロサンゼルスにあるさまざまなスタジアムが、実際に地元の会場でスポーツイベントを開催しています。それぞれの会場の提供方法は、本当に素晴らしいものです。ロサンゼルスの組織委員会と早い段階から関わることで、プロスポーツにおける経験の一部から恩恵を受けることができます。」


実際、IOCは現在ロサンゼルスで一連のワークショップを開催しています。2028年にロサンゼルスで開催されるオリンピックに向けて、構築すべきさまざまなデータパートナーシップについて理解を深めているところです。

「私たちは、2028年に向けて、自動化を最大限に活用し、リアルタイム分析を活用できるように、何年も前から関係するすべての人と協力し、計画を推し進めています。」とPayne氏は言います。「リアルタイム分析をオペレーション・センターに導入することで、主要な関係者は1時間単位でサービスレベルを調整でき、結果的にオペレーション全体の効率を向上させることができます」。

 

 

 

※本記事は、「The Data Behind Tokyo 2020: The Evolution of the Olympic Games」を翻訳・加筆修正したものです。